Essay~これまでのこと、これからのこと~

Vol.6 インストラクターの研修会を開催しています(その1)

インストラクターの研修会1

毎年インストラクター研修会を開催しています。会場は東京と大阪です。

2017年現在、私は約100名のヘルマンハープのインストラクターに奏法と教授法を教えています。
養成講座で認定を受けたインストラクターに、その次の年からは、奏法のテキストブック「ヘルマンハープの奏法〈基礎編〉」(梶原千沙都著、2012年音楽之友社刊)のテーマごとの内容をさらに掘り下げたヘルマンハープの教授法を講義します。ヘルマンハープの奥深い可能性を知っておくことは、指導者にとって必修なのです。


世界初の奏法指導書「ヘルマンハープの奏法〈基礎編〉」

通常の五線譜の世界では考えられない独特の奏法理論がヘルマンハープにはあり、世界中ここでしか習えないと自負しています。それは楽器ヘルマンハープと音楽をつないで機動させるソフトのようなもので、私が練りだした2012年に世界初の奏法指導書「ヘルマンハープの奏法〈基礎編〉」を発表するまで、長くヘルマンハープの中に眠っていた普遍的法則なのです。手の形や構えの解説にはじまり、ここにヘルマンハープの基礎が誕生しました。

もちろんヘルマンハープは弾けるだけで十分楽しい楽器ですから、それを楽しまれるだけでもいいのです。でも、「教室に習いに行こう!」という方には、美しい音楽を奏でるためのコツを先生から教えてもらいたいという人もたくさんいます。
ヘルマンハープは誰でも弾ける楽器であると同時に、おもちゃのようにただ音符をたどって弾ければ終わりという楽器ではなく、弾き方(奏法)によってさまざまな音楽表現のできる、ほんものの弦楽器であることに多くの方が気づき始めています。

インストラクターの研修会2

ですからヘルマンハープ教室では、ヘルマンハープの基礎となる弾き方を受講生が先生から学べる場であることが重要です。というのは、この基礎となる弾き方の延長線上に、身体の使い方や余韻の操作方法といった難しいテクニックが出てきますので、将来、さらに高度な奏法にも挑戦したいという人にとって、基礎をただしく習っておくことが大事なのです。ちなみに、あるドイツを代表するチター奏者は、「構え方を見ただけで、教えることがあるのかどうかが分かる」と言っておられましたが、そのことは、ヘルマンハープについても同じだと言えます。

さて、昨年の研修会のテーマの一つは、「di(8分音符)の奏法」です。ヘルマンハープという弦楽器で、短い音をなめらかに弾いたり、逆に、音の切れを出しながら弾くことは、ヘルマンハープ演奏の大きな課題です。また、同じ弦を何度もはじくと「ビリッ」というビビリの音が発生しやすいので、それを解消する方法も受講生に伝えなければなりません。「diの奏法」は、何年やっても飽きないテーマになります。

インストラクターの研修会3

そしてもう一つの講義は「障がいのある人のための指導法」でした。私は、健常者と障がいのある方、高齢の方、若い方など年間延べ3000人に10年以上講義を行ってきました。そして私はずっと、障がいのある人への教授法と健常者への教授法において、何が共通していて、どこを変えればいいのかをずっと考えてきました。そして今、障がいのある人のための指導法をはっきりと伝えられる段階に来たと感じています。

率直に言えば、基礎においては、健常者と障がい者への教授法はかなり共通するメソッドを適用できることを映像の記録によって証明することができます。障がいのある人を教えるにあたって重要なのは、障がいの特徴を個性ととらえて、よりパーソナルな視点から、課題の選択や教え方のスピード、理解のできる解説の仕方などに工夫をすることです。障がいのある人にヘルマンハープを教えることは、「障がいのある人の学ぶ力の大きさ」を目の当たりにすることになりますので、ヘルマンハープの指導をする人は、ぜひそのことを実感してもらいたいと願っています。