Essay~これまでのこと、これからのこと~

Vol.7 インストラクターの研修会を開催しています(その2)

インストラクターの研修会1

研修の後半では、インストラクターへの個別奏法指導を行います。一人ずつ公開レッスンのように弾き方の指導をします。
他の人が指導を受けている様子を見るのは、とてもいいお勉強になります。

私はこの5分程度の個別奏法指導で、皆さんの音と音楽を瞬時に変えてしまうことができます。後ろを向いて音を聴いても、今どのような弾き方をして出た音かがわかります。奏法の指示は、「やさしく」とか「やわらかく」といった情緒的な形容詞で指示しても実現は難しく、演奏に弾き方の規則性を使えるように、手の形や体の動かし方をどのように変えるかを教えます。2012年に奏法指導書を出版したころ、すでに私にはこの「技」が身についていました。


インストラクターの研修会2

振り返りますと、私は2004年にヘルマンハープをドイツの開発者、ヘルマン先生からお預かりした時から、私はヘルマンハープの中に眠っていたほんものの楽器としての“力”である〝ヘルマンハープの奏法″を探す旅に出発したのだと思います。
そしてそれを気づかせてくれたのは、なんと、「ヘルマンハープの音が自分にはちょっと合わない…。」と感じた一部の人の声でした。

そんなある日、私はその否定的な意見に耳を澄ませて考えたのです。「何がその人に合わないのだろう?」と。そしてその否定的なご意見から突き止めた原因は、「音が小さくて他楽器と合わない」とか「リズムがうまく刻めない感じ」ということ。そして…、でも…、それこそ“ヘルマンハープの楽器の特徴”であることに気づいたのです!

インストラクターの研修会3

「音が小さいのは、強い音が苦手なダウン症のヘルマン先生の息子さんに合わせたから」であり、リズムが刻みにくいのは、「ヘルマンハープが機敏な動作がかなわない息子さんがゆっくりと音楽を奏でるための長い余韻を持っているから」だ!と、気づいたのです。
そして、それらのヘルマンハープ特徴は、現在健常者である人にも、齢を重ねればいつかきっと大きな助けになる大切な特徴なのです。「原点がわかると本質がわかる!」とはこのことです。まるで毛糸玉がほどけるように、世界初のヘルマンハープの体系的な奏法を書き上げることができました。

インストラクターの研修会4

ヘルマンハープ教室で習う方は、社会の中で大切な役割を果たしてこられたシニア世代が多く、また、障がいのある受講生もおられます。ですから、一方で、ヘルマンハープのインストラクターは、すぐれた社会的マナーを持って教室運営を行うことを心構えとして掲げています。
そして、受講生の皆さんの腕が上がり、ヘルマンハープでのボランティア活動なども応援できるインストラクターになれれば素晴らしいことです。

インストラクターの研修会5

今年2017年度は指導グレード3級への初の昇格試験です。認定時の指導グレード4級の初級インストラクターから、指導グレード3級のスタンダードインストラクターへの昇格の試験です。「音の長さの表現」といった基礎的な技術をマスターしているか、ヘルマンハープ教室の共通用語で基本的な解説を行えるかなどが実技や筆記試験で判定されます。

インストラクターの研修会6

世に音楽の専門家は何百万人もおられますが、ヘルマンハープの先生としての訓練を受けていなければ、やはりプロフェッショナルとは呼べないでしょう。
自分の生徒だけが満足すればよいというスタンスではなく、全国のヘルマンハープを習う人が基本的な共通の事項を共有しながら学べるというのは、全国の受講生に安心感をもたらします。
これを養成講座や研修会での学びからしっかり実現していこうとするインストラクターが年ごとに増えており、それはほんとうに頼もしいことです。

「ヘルマンハープのことは一から学ばねばならない」と決意して、まっさらな気持ちで勉強してきたインストラクターからは、楽器の発祥や楽器そのものに対する敬意を伺うことができます。
インストラクターがおもちゃのような楽器ではなく、「ほんものの楽器」という印象を世に与えていけるかどうかは、やはり自分自身が自立したほんものの楽器としてヘルマンハープに向かえるマインドを持っているかどうかにかかってきます。

みなさんが学んでいる楽器「ヘルマンハープ」は、ヘルマンハープにしかない美しい音色と、規則性のある奏法を持っている「ほんものの楽器」です。ですから、指導グレード3級をインストラクター全員が取れるようになるまで、私は絶対にあきらめずに指導していきたいと思っています。