NHK第一放送で月曜日の11時~5時まで、「ラジオ深夜便」という番組が放送されているのをご存知でしょうか?
私は2013年の1月に自分が「明日への言葉」という4時台のコーナーに出演するまで、実は名前しか知りませんでした。ところがこのコーナー、全国200万人の人が聴いている番組なのです。
2012年の暮れに、アンカーの中村宏さんが、西宮市のヘルマンハープのショールームに小さなレコーダーをもって収録にお越しになりました。
私は「ラジオ深夜便」をそれほどたくさんの方が聴かれているなど夢にも思っていなかったので、とてもリラックスしてお話ししたり、その場で演奏もしたりすることができました。
・ヘルマンハープが、どのような経緯でドイツで誕生したのか。
・2003年に夫の海外転勤でウィーンに住んでいた時に、私がどのような経緯で日本人としてはじめてヘルマンハープに出会うことになるのか?
・ヘルマンハープを開発したヘルマンさん親子への想いや、その頃、家庭を襲った病気についての話。
・ウィーンの知的障がい者施設での出来事や日本でヘルマンハープの普及のお許しを得るまでの過程。
・日本で普及をスタートさせたときにどのような壁にぶつかり、どのように克服したのか…。
日本普及10周年を迎えての想いとこれまでのことを、40分間も中村さんのシャープな中にもゆったりした話のリードで語らせていただきました。
そして放送日の2013年1月5日は忘れもしません。
ヘルマンハープ振興会のホームページを管理している方から、「アクセス数が急増していて、何か異常なことが起こっているようです!」という連絡が入りました。
確かに異常であることは間違いありません。その日のアクセス数は、32万ページビューにのぼりました。でも、これはインターネットの故障ではなく現実だったのです。事務所に問い合わせの電話は鳴り止まず、その結果、全国津々浦々にヘルマンハープの愛好家が誕生しました。
「ヘルマンハープのお話を聞き、感動を覚えた」ということで、お問い合わせをたくさんいただいたのです。
そして私のコンサートにはラジオを聴いた方がたくさん来てくださいました。お手紙もいただきました。聴く人の想いはそれぞれです。自分ができる音楽を求めていた方、介護に打ち込んでいる方、一人暮らしになり眠れないという方、障がいのある人の親御さん、そして、女性のめずらしい生き方に共感してくださった女性。人の想いは人の数だけありますが、話のどこかが誰かの心につながったようなトーク番組だったようです。
そして、その年の11月にはアンコール放送となりました。そしてまた、ヘルマンハープをする人が増えました。
そしてさらに12月には、私のCD「バリアフリーの花~ヘルマンハープサウンド~」の特集番組が組まれました。
なぜなら、アンカーの中村さんいわく、「ラジオ深夜便のお仕事をして以来、こんなにいつまでたっても反響が止まないことは初めて」だそうです。それで、何度もアンコール的に放送してくださることになったそうです。
そして、2016年の2月。またまたアンカーの中村さんからメールをいただきました。
『先日、朝の4時台に「ジムノペティ」をかけさせていただきました。
神奈川県の女性からの、「深夜便でヘルマンハープを知って使い始め、今では地域で演奏しています。深夜便のお陰です」というお便りを紹介しました。
今でも時々、ヘルマンハープについて、梶原さんについてのお便りが来ます。
こんなにいつまでも反響がくるのは珍しいです。』
まだこのありえない不思議な現象、"ヘルマンハープのラジオ深夜便現象"は続いているようです。
これがきっかけで知ったもう一つの社会現象というか、社会問題がありました。
ヘルマンハープの愛好者は今のところ、圧倒的に女性が多いのです。日本人は「ハープ」というと女性が弾く楽器という思い込みが強いようです。ドイツではそうでもなく、普通に男性もやっておられます。
ところが珍しく、ラジオ深夜便を聞いての問い合わせの8割が男性でした。そして、東京・青山や兵庫・西宮のショールームに、奥様とごいっしょにお越しになるシニアの男性がたくさんおられました。
『これからいっしょに弾かないか?これだったらいっしょに弾ける』と奥様をしきりに誘っておられます。『これからいっしょにこの楽器でボランティア活動をしようよ』と夢も語り始められます。
興味を持った男性の多くは、ヘルマンハープの発祥の物語に感動し、この楽器がもつ社会的な意味も、ヘルマンハープに取り組む値打ちを感じさせているように思えました。
しかし、どのご夫婦の様子からも、奥様は主婦としての人生の中で、自分の交友関係や趣味の世界などを今もって持続させており、旦那様は定年後の趣味を、何か妻と共有したいと願っていることが見受けられました。
お二人の話を聞きながら横に立っていますと、自然と旦那様の方がお気の毒に思えてくるのは、やはりそのようなものが伝わってくるからでしょう。
そのような問題を「社会問題だ」と、はじめて意識するようになったほど、旦那様方が奥様を伴ってヘルマンハープを見に来られました。
そして、旦那様の夢が見事かなったご夫婦も知っています。
2人で、ハープを持ち帰り、長野県でボランティア活動を始められた方。あるいは、旅行先の旅館のロビーでヘルマンハープの演奏を二人でしながら旅をしている方もいます。
この社会問題、ラジオ深夜便のおかげで少しばかり解決されたケースがあったようです。
この放送で自分自身にとって意外だったのが、リスナーのみなさんが、『朝4時に目覚めて聞き始めると、とっても声が良かった』『聞きやすかった』ということでした。原因はわかりました。
つまり、私がラジオ深夜便という番組が200万人も聞いているスゴイ番組だと知らなかったので、「朝、4時に起きて聴く人がいるのかな?」というぐらいにリラックスして中村さんとお話ししていたのです。
帰り際に中村さんが、「すごくたくさんの人が聴きますからね。きっと反響がありますよ」としきりに言われていたことはなんとなく思い出しますが、正直ピンと来ていなかったのです。
その後、深夜便のことはヘルマンハープの集まりで話題になりました。ヘルマンハープの講習会で生徒さんたちのこんな話も耳にしました。『ラジオ深夜便のお話がとってもよかったのよお!いつもの梶原先生のテンションの高さがなくてねぇ!』
「やっぱり」です。
メディア出演履歴ページで、「ラジオ深夜便」月刊誌と歌読本の記事をご覧いただけます。
ラジオ深夜便 4 月号 『ヘルマンハープってどんな楽器?』(2013年4月)
NHKラジオ深夜便 歌読本『ヘルマンハープと二つの愛』(2014年3月)